空き家は地域の景観や防災・防犯、地域経済に悪影響を及ぼす深刻な問題といえます。早急な空き家対策が求められるなかで、有効な手段が「空き家の適切な利活用」です。空き家の適切な利活用は、所有者だけではなく地域経済にもメリットが生まれるでしょう。
今回は、空き家を利活用するメリットや空き家対策に成功した10の成功事例、利活用時に押さえておきたいポイントを解説します。空き家の資産化や地域活性化のヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
空き家対策として利活用する主なメリット
空き家を放置せずに利活用する主なメリットは、以下のとおりです。
利活用のメリット | 詳細 |
不動産価値の向上 | 適切な利活用により、空き家自体や周辺の土地の資産価値が向上する。 |
空き家の資産化 | リノベーションやリフォームを行うことで、賃貸や事業利用により収益物件として資産化できる。収益物件になれば売却にも期待できる。 |
コストの削減 | 相続税や固定資産税といった税金や、維持管理費などのコストを削減できる。 |
地域活性化に貢献 | 住宅、店舗、観光施設として利活用することで、人の流れや経済活動が生まれる。移住者や観光客を呼び込みやすくなり、地域全体の活性化につながる。 |
地域の安全性が向上 | 利活用により老朽化による倒壊や不審者の侵入、火災のリスクを抑えられ、防犯・防災の面で地域の安全性が向上する。 |
空き家の利活用は、所有者だけではなく地域にとっても恩恵をもたらしてくれます。
空き家対策に成功した10の利活用事例
空き家対策で実際に成功している10の利活用事例は、以下のとおりです。
- 立地を活かしたブックカフェ|東京都
- 古民家の良さを残したラーメン店|徳島県
- 釣りが満喫できるセカンドハウス|岡山県
- 移住希望者向けのシェアハウス|岐阜県
- 気軽に体験できるお試し移住住宅|静岡県
- 現代アートで蘇った農家民宿|新潟県
- 元飲食店から生まれ変わった工房・ギャラリー|埼玉県
- 新しい価値を提供するコミュニティースペース|長野県
- 管理の難しい空き家を賃貸住宅へ|大分県
- 家族でDIYした民泊もできる住宅へ|鳥取県
それぞれの成功事例を参考に、空き家を利活用してみてください。
立地を活かしたブックカフェ|東京都
南長崎ニコニコ商店街では、空き家を利活用したブックカフェをオープンしています。商店街会長の小出幹雄さんが、地域活性化を目的としてトキワ荘マンガミュージアムの目の前にある空き家を利活用。
行政の補助金を活用しつつ、民間事業者と協力して店舗デザインを実現。地域住民に親しまれる場所を作ることで、空き家活用のモデルケースとして注目を集めています。商店街の活気を取り戻すきっかけになるでしょう。
古民家の良さを残したラーメン店|徳島県
美波町日和佐の薬王寺門前町では、空き家を活用したカフェやサテライトオフィスが次々とオープンし、地域活性化が進んでいます。このような利活用の一環として、東京から移住した松田さん親子がラーメン店「藍庵」を開店。
地元産の阿波尾鶏や薬膳を使ったメニューで、お遍路さんや地元住民の癒やしの場となっています。美波町の補助金を活用した耐震補強を施して安全性を高めつつ、交流スペースとしても機能。門前町再生プロジェクトの成功事例として注目されています。
釣りが満喫できるセカンドハウス|岡山県
牛窓町鹿忍にある長年放置されていた空き家は、所有者が一念発起し、自費でリフォームを行い「空き家バンク」に登録しました。結果的に岡山市内在住の入居希望者が、牛窓町鹿忍の自然環境に魅力を感じて購入。
現在はセカンドハウスとして利用され、休日には釣りなどを楽しむ拠点となっています。所有者による、空き家利活用への意欲と行動が成功を導いた事例です。
移住希望者向けのシェアハウス|岐阜県
白川村では移住促進を目的に、空き家をリノベーションしてお試し移住施設(シェアハウス)を、助成制度を活用して整備しました。村が10年間借り上げた木造平屋建ての空き家を、公募型ワークショップで住民や移住希望者が間取り決めから施工まで参加。
述べ200人以上が関わり、深い関係性を築きながら完成しました。短期間でも気軽に滞在できるシェアハウスを通じて、移住希望者が村の暮らしを体験できる場として、地域活性化にも貢献しています。
気軽に体験できるお試し移住住宅|静岡県
南伊豆町の「上賀茂・田舎暮らし体験住宅」は、移住を検討する方が1泊2日から1週間程度滞在し、生活体験や物件・仕事探しができる施設です。移築された築100年の古民家を改修したこの施設は、町の中心部に近く、商店街や公共施設へのアクセスも良好。
Wi-Fi完備でテレワークやサテライトオフィスとしても利用可能です。また、中期的に町内の空き家を活用した移住促進も進行中で、さらなる物件の追加も予定されています。
出典元:南伊豆町|お試し移住
現代アートで蘇った農家民宿|新潟県
築150年の古民家をアート作品として蘇らせた「脱皮する家」は、床・壁・柱など家全体を彫刻刀で彫り、新たな美を創出した元空き家です。囲炉裏や竈(かまど)のすすが残る内部を、2年半・延べ3000人工をかけてアーティストたちが作品化。
一棟貸しの農家民宿として提供され、家族やグループで宿泊しながら、集落の静かな一夜を楽しむことができます。アートと歴史を融合させて特別な空間を創出した、空き家利活用の成功例といえるでしょう。
出典元:脱皮する家
元飲食店から生まれ変わった工房・ギャラリー|埼玉県
川越市元町の「弁天横丁復興計画」は、大正初期建築の長屋を工房・ギャラリー付き住戸として再生したプロジェクトです。市外のアーティストが物件に魅力を感じ、地元NPOが調整役となり活用が実現。
限られた予算の中でボランティアによる改修が行われ、雰囲気のある空間に仕上がりました。埼玉県の助成金を活用し、水道や電気設備も更新。周辺にはカフェなども開業し、地域全体の活性化に貢献しています。
新しい価値を提供するコミュニティースペース|長野県
東京出身の四宮陽我さんは、旅先での出会いを通じて「仲間と暮らせる村をつくる」という夢を抱き、長野県下條村へ移住。築150年の古民家を購入し、仲間が集まれる「住み開き」の場として空き家の利活用を進めています。
廃材を活用し、手作りで改修した家や蔵は、訪れる人々が滞在し自由に過ごせる空間に。農業や林業など仲間たちのスキルを生かした自給自足の暮らしを目指し、理想のコミュニティづくりを進めています。
出典元:信州を住みこなす|夢はいつか仲間と暮らす“村を”つくること
管理の難しい空き家を賃貸住宅へ|大分県
県外在住の所有者が管理できず利用計画のない空き家を、「NPO法人 空き家サポートおおいた」が利活用をアドバイス。結果的に空き家サポートおおいたが買い取り、市の補助金制度を活用しながら賃貸住宅として利活用するためのリフォームを行いました。
リフォーム後に空き家バンクを通じて入居者を募集し、スムーズに契約が成立。賃貸住宅として需要が高い立地を活かした成功事例で、地域活性化と空き家解消のモデルケースとなっています。
出典元:空き家サポートおおいた|空き家を購入しての、賃貸住宅への改修事例
家族でDIYした民泊もできる住宅へ|鳥取県
智頭町で空き家を購入した長谷さん一家は、DIYで古民家をリフォームし、自然を満喫できる暮らしを実現しました。壁には漆喰、床や天井には智頭杉を使用し、給湯は薪ボイラー、暖房は薪ストーブを導入。
バイオガストイレで糞尿を液肥化し、田畑で米や野菜を栽培し、ニワトリを飼育する自給自足の生活を送っています。2回目の改修では砂場や囲炉裏付きのベランダを作り、ゲストルームを整備して民泊「ちづの宿 日々の暮らし」も開始。空き家の利活用により智頭の魅力を発信することで、移住者の増加につながっています。
出典元:鳥取県|空き家利活用事例集
空き家対策で利活用を行う際のポイント
空き家対策において利活用する際は、主に以下のポイントを意識しておきましょう。
利活用時の注意点 | 詳細 |
法規制の確認 | 建築基準法や消防法、地方自治体の条例などを確認する。 |
費用の見積もりと資金調達 | 税金やリフォーム費用などを正確に把握する。また費用負担を減らすための補助金が活用できないか調べる。 |
地域ニーズの把握 | アンケートや市場調査を行い、地域に最適な利活用方法を検討する。 |
地域住民との関係構築 | 地域住民への周知や理解を得ることで、不要なトラブルを避けながら支持を得やすくなる。 |
マーケティング戦略の策定 | WebサイトやSNS、地域メディアとの連携など、知ってもらうためのマーケティングを行う。 |
安全性の確保 | 定期的に安全点検や修繕を行い、利用者の安全確保を優先する。必要に応じて専門家を活用する。 |
とくに空き家は、法規制や安全性など「見えないリスク」が潜んでいる場合があります。ポイントを抑えて、適切な利活用を行うことが重要です。
空き家の適切な利活用で価値を生み出そう!
空き家を放置せず利活用することで、不動産価値の向上や資産化、維持管理コストの削減、地域活性化、安全性の向上といった多くのメリットが得られます。一方で空き家には、見えないリスクが潜んでいる可能性があるため、必要に応じて専門家も交えながら利活用を進めることが重要です。
空き家を適切に利活用することで、カフェやシェアハウス、民泊など多種多様な価値を生み出すことができます。全国各地の成功事例を参考に空き家対策として適切な利活用を行い、価値を生み出していきましょう。