放置される空き家が増加するなかで、リノベーションやリフォームで再生する取り組みが注目を集めています。必要に応じたリノベーションやリフォームを行うことで、空き家に新たな価値を生み出してくれるでしょう。今回はリノベーションとリフォームの違い、メリット・デメリット、費用相場、成功させるポイントなどを解説します。空き家所有者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

空き家のリノベーションとリフォームの違い

空き家を再生する際に聞く「リノベーション」または「リフォーム」という言葉。どう違うのか疑問に思っている方がいるのではないでしょうか。まずは、リノベーションとリフォームの定義や違いについて解説します。リノベーションとリフォームの一般的な違いは、以下のとおりです。

リノベーションリフォーム
規模建物に新たな価値を加えるための大規模改修がメイン老朽化した建物や設備を新築時の状態に戻すための小規模修繕がメイン
目的建物の用途やデザイン、機能を向上させること現状の機能を維持または改善すること
費用高め比較的低め
工期長め短め
主な工事内容耐震補強、間取り変更、デザイン性の高い修繕など壁紙の張り替え、床の修復、設備交換など

ただし、リノベーションとリフォームには、明確な定義というものが存在しません。そもそも、リフォーム(reform)は和製英語であり、英語圏では「改革」といった意味で使用されます。本来の正しい意味で使用されているわけではありません。

また「部分リノベーション」という言葉が使われることもあり、リフォームとの線引きが曖昧だといえるでしょう。このように定義もなく曖昧な部分があるため、各々の解釈で使い分けても問題はありません

空き家リノベーション・リフォームするメリット

空き家をリノベーション・リフォームする際のメリットは、以下のとおりです。

メリット詳細
資産価値の向上老朽化した空き家を修繕することで、建物の価値が上がり、売却や賃貸がしやすくなる
住環境の改善設備や間取りを現代のライフスタイルに合わせてアップデートできるため、住宅の快適性がアップする
空き家問題の解消空き家の放置により発生するリスク(治安や景観の悪化、倒壊、固定資産税の増加など)を解消できる
費用の最適化修繕箇所の取捨選択により新築よりも費用を抑えながら、魅力的な物件に再生できる場合がある
補助金の利用空き家の利活用には自治体が補助金を出していることがあり、費用を軽減できる可能性あり
雰囲気の活用空き家の雰囲気を活用して、趣のある住宅や店舗のデザインに仕上げられる

空き家リノベーション・リフォームするデメリット

空き家をリノベーション・リフォームする際のデメリットは、以下のとおりです。

デメリット詳細
予算オーバーのリスク想定以上に老朽化が進んでいる場合、修繕費用が高額になる可能性がある
法規制の問題築年数が古い建物では、現在の建築基準法に適合させるための追加工事が必要になる場合がある
固定資産税の増加修繕内容(増築や用途変更など)によっては、固定資産税が増えることがある
予期せぬ問題の発生シロアリ被害や構造の問題が発見されることがあり、計画が変更になる可能性がある
工期の長期化空き家の状態によって、調査や修繕に時間がかかることがある
住宅性能の限界古い建物特有の断熱性能や耐震性の限界が、完全には解消できない場合がある

空き家リノベーション・リフォームの費用相場

空き家をリノベーションまたはリフォームする際の、費用相場は以下のとおりです。

  • リフォーム費用相場:10~150万円
  • リノベーション費用相場:500~3,000万円

リノベーション・リフォームともに、詳細な費用相場の内訳を見てみましょう。

リノベーション費用相場

空き家のリノベーションを行う際の費用相場は、以下のとおりです。

  • マンション:500万~1,500万円
  • 戸建て:800万~2,000万円
  • 古民家再生:1,000万~3,000万円

リノベーションの費用は、全体的な修繕を行うことが多いため、高くなりがちです。とくに古民家のリノベーションは、一般的な空き家よりも高額になる可能性があるでしょう。ただし、状態に応じて必要最低限のリノベーションのみを行うことで、費用を抑えることができます

リフォーム費用相場

空き家のリフォームを行う際の費用相場は、以下のとおりです。

  • 床の張り替え:10万~50万円
  • 洗面所:10~30万円
  • トイレ:10万~50万円
  • 浴室:50万~150万円
  • キッチン:50万~150万円
  • リビング:50~150万円
  • 屋根:50万~150万円
  • 外壁塗装:50万~200万円

空き家の状態によっては、部分的なリフォームのみで再生することが可能です。リノベーション同様に、状態に応じてリフォーム箇所を選定すると良いでしょう。

空き家リノベーション or リフォームの判断基準

空き家を「リノベーション」する場合と「リフォーム」する場合は、目的や建物の状態によって異なります。それぞれに向いている場合をピックアップしているので、参考にしてみてください。

空き家リノベーションが向いている場合

空き家でリノベーションが向いている場合は、以下のとおりです。

大幅な変更や機能向上が必要な場合
  • 建物の用途を変えたい(例:住居→店舗)
  • 間取りを大きく変更して、ライフスタイルに合わせた空間を作りたい
  • 古民家等の個性を活かしつつ、現代風に改修したい
建物の老朽化が進んでいる場合
  • 基礎や構造に問題がないものの、内外装で大幅な修繕が必要
  • 給排水管や電気配線など、内部設備の更新が必要
資産価値を向上させる場合
  • 高付加価値なデザインや設備を導入して、売却や賃貸で利益を出したい
独自性を追求する場合
  • 独自のデザインやテーマを持たせたい
  • 古い建物の風合いを活かしながら、快適性を追求したい

リフォームが向いている場合

空き家でリフォームが向いている場合は、以下のとおりです。

部分的な修繕が必要な場合
  • 壁紙の張り替えや床の補修、キッチンやバスルームなど特定部分の更新
  • 経年劣化による設備の交換や修理
費用を抑えたい場合
  • 建物全体を大幅に変える必要がなく、予算を低く抑えたい
  • 必要最低限の工事で生活に支障がない状態にしたい
建物の状態が比較的良好な場合
  • 大きな構造的な問題がなく、外装や内装の軽微な修繕で済む
  • 築年数が比較的新しく、基礎や設備が現行基準に近い
短期間で完成させたい場合
  • 工事期間を短縮したい(例:すぐに住み始める、賃貸物件として貸し出す)

空き家リノベーション・リフォームを成功させるポイント

空き家リノベーション・リフォームを成功させるには、以下のポイントを意識しましょう。

費用自治体の補助金や助成金を活用する
DIYでできる部分は自分で施工する
必要な部分だけを優先して改修する
目的原状回復したいならリフォーム、新しい価値を付加したいならリノベーションを選択
業者選び複数の業者に見積もりを依頼し、信頼できる会社を選ぶ
長期計画ライフスタイルや建物の用途を考慮した設計を行う

空き家の可能性を引き出すリノベーションとリフォーム

空き家をリノベーションやリフォームすることで、住居のみならずビジネス利用や収益物件としても、新たな価値を生み出すことが可能です。空き家のリノベーションやリフォームによる利活用は、さまざまな放置リスクを抑えることができます。目的や予算に応じてリノベーションやリフォームを行い、空き家を適切に利活用していきましょう。