近年、増え続けている空き家。空き家問題は所有者への経済的負担だけではなく、近隣住民にも悪影響を及ぼします。空き家問題への理解を深めて、適切な対策を行うことが重要です。今回は空き家問題の現状や原因、2025年以降の予想、放置するデメリット、国や地方自治体の対策、個人でできる対策を解説します。空き家を資産化できる可能性があるため、ぜひ参考にしてみてください。
空き家問題の現状と2025年問題
総務省の「令和5年 住宅・土地統計調査」によれば、日本の住宅総戸数(約6,500万戸|2023年度)のうち、日本の空き家数は900万超、空き家率は13.8%と過去最高を記録しています。また空き家数の増加数は、1993年から2023年までの30年間で約2倍です。
とくに2025年以降は、空き家問題が深刻化していくと予想されています。2025年以降は人口の多い団塊世代が75歳(後期高齢者)になることから、日本の高齢化が一段と進むでしょう。高齢化が進めば、所有者が亡くなったり介護施設等へ入所したりすることで、空き家の増加が加速しやすくなります。
空き家問題を解決するためには、今のうちから理解を深めて対策を行うことが重要です。
空き家問題が進む原因
空き家問題が進む原因は、主に以下の3つです。
- 人口減少と少子高齢化
- 所有者不明物件の増加
- 地方の過疎化と住宅需要の低下
空き家問題への理解が深まるため、ぜひ参考にしてみてください。
人口減少と少子高齢化
1つ目の原因は「人口減少と少子高齢化」です。2025年以降の総人口が1億2,000万人を下回ると予想される一方で、高齢者(65歳以上)の人口は3,600万人超と増加が見込まれています。人口減少や少子高齢化が進めば、住宅を有効活用できる人が少なくなり、空き家の増加につながるでしょう。
参考元:内閣府|第1章 高齢化の状況
所有者不明物件の増加
2つ目の原因は「所有者不明物件の増加」です。所有者不明物件は、原則として所有者の同意なしに売買や処分などができません。とくに多くの相続人がいる場合は、共有者(所有者)の特定が難しくなり、手続きに時間がかかってしまいます。そのため管理や活用が難しい所有者不明物件の増加は、空き家対策の大きな課題といえるでしょう。
地方の過疎化と住宅需要の低下
3つ目の原因は「地方の過疎化と住宅需要の低下」です。若年層を中心に都市部への移動が続いており、地方の過疎化が加速していることで住宅需要が低下しています。また耐震や断熱などの住宅性能が低めの築古物件は、敬遠されがちです。結果的に、空き家増加の原因になっています。
空き家を放置するデメリット
空き家を放置するデメリットとリスクは、主に以下の5つです。
デメリット | リスク |
治安の悪化 | 不法侵入や放火など犯罪の温床になり、治安悪化につながる可能性あり。 |
景観の劣化 | 地域の景観を損ね、周辺の不動産価値を低下させる要因に。結果的に周辺地域の魅力が減り、人口減少の一因にもなる。 |
資産価値の低下 | 放置するほど建物や土地の価値が低下し、売却や処分がしにくくなる。 |
倒壊リスクの懸念 | 老朽化により、自然災害(地震や台風など)で倒壊するおそれあり。近隣住民や通行人が被害を被る可能性あり。 |
経済的負担の増加 | 住んでいなくても固定資産税や都市計画税がかかり、場合によっては管理費用(水道光熱費や清掃費用など)も発生する。 |
所有者だけではなく近隣住民にも影響を及ぼすため、早期の対策が必要になるでしょう。
空き家問題への対策
空き家問題に対する国や地方自治体、個人ができる対策を解説します。空き家を放置すれば負債を生む「負動産」になるものの、対策を行うことで利益を生む「富動産」へと生まれ変わるでしょう。空き家問題への意識を高めて、取り組んでみてください。
国や地方自治体が行っている主な空き家対策
国や地方自治体が行っている主な空き家対策は、以下のとおりです。
- データベースの整備
- 軽減措置と法整備
- 相続登記の義務化
- デジタル技術の活用
- 補助金の交付
国や地方自治体が行っている、各空き家対策を簡単に解説します。
データベースの構築
国土交通省では、空き家情報を一元管理するデータベースの構築を進めています。市区町村ごとに異なる空き家データを整備し、集約や分析に必要な労力の効率化が目的です。空き家の状態や活用方法が見える化されつつあり、空き家問題の解決に向けた大きな一歩といえるでしょう。
参考元:国土交通省|空き家データベースシステムの整備に向けた調査事業を 実施する者の公募についての公示
軽減措置と空き家の法整備
所有者に空き家の適切な管理や活用の意欲を促すため、相続税や固定資産税が安くなる軽減措置を行っています。2015年には「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空家等対策特別措置法)」が施行され、地方自治体が危険な空き家を「特定空き家」として指定でき、所有者に改善を求められるようになりました。また2023年の法改正により内容が強化されたことで、空き家放置の抑止力になっています。
相続登記の義務化
空き家問題を加速させる原因の1つに、相続登記がされないまま放置されている所有者不明物件の増加があります。相続登記は今まで任意だったため、所有者不明物件の増加につながっていました。しかし、令和6年4月から相続登記を義務化(相続で取得したことを知った時から3年以内)し、所有者不明物件の増加対策を行っています。
参考元:東京法務局|相続登記が義務化されました
デジタル技術の活用
デジタル技術を活用した空き家対策も進行中です。たとえばドローンとAIの活用による空き家調査の効率化、遠方の移住希望者に向けたVR技術による内覧のオンライン化、IoTセンサーによる遠隔監視システムの導入などがあります。今後も、さまざまなデジタル技術により空き家対策が講じられていくでしょう。
補助金の交付
国や地方自治体では、空き家の入居者や解体・リフォームなどに対する補助金を提供しています。たとえば入居者(低所得者)の家賃補助を行う「住宅セーフティネット制度」、老朽化した空き家の解体費用補助を行う「老朽空家等解体補助制度(兵庫県)」など。空き家放置への関心が高まるなか、利用者が増えつつあります。
参考元:国土交通省|住宅セーフティネット制度について
:兵庫県|老朽空家等解体補助制度申請手引き
個人ができる空き家対策
個人ができる空き家対策は、主に以下の3つです。
対策 | 詳細 |
早期の相続手続き | 相続が発生時は、専門家に相談しながら早期に手続きを進めること。空き家の売却や賃貸について早めに動くことで、放置リスクが減少する。 |
リフォームやリノベーションの活用 | 空き家を魅力的な住宅に再生するためには、リフォームやリノベーションが有効。たとえば耐震補強や外壁塗装、水回りのリフォームなどを行えば、売却や賃貸がしやすくなる。 |
空き家バンクの利用 | 地方自治体や民間企業が運営する「空き家バンク」に物件を登録することで、空き家の利用希望者とつながれる。地方移住を希望する人や事業用物件を探している人に有効。 |
これらの対策を早めに実行することで、空き家の放置リスクを抑えて有効活用しやすくなります。できることから始めていきましょう。
空き家を有効活用して資産に変えよう!
2025年の日本における空き家問題は、国・地方自治体・個人が連携して取り組むべき課題です。空き家を適切に管理し活用することで、地域経済や住環境に良い影響を与えられるでしょう。放置された空き家は「負動産」になるものの、新しい価値を生む資産として活用すれば「富動産」へと生まれ変わります。ぜひ所有または相続予定の空き家を有効活用し、空き家放置のリスクを抑えて資産に変えましょう。