• 最近、空き家って言葉を聞くけど、定義が知りたい
  • 空き家を放置すると、どんなリスクはあるんだろう
  • 空き家の処分って、どうすれば良いのかな

空き家について知ることは、さまざまなリスクを抑えるために大切です。空き家への理解がないまま所有者になってしまうと、思わぬ出費が発生したり、近隣エリアの危険や治安悪化につながったりするでしょう。

今回は空き家の定義から処分方法まで解説します。空き家に関する知識が深まることで、リスクを抑えながら有効活用できるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。

空き家の定義

空き家の定義は、主に以下の3つがあります。

  • 国土交通省における定義
  • 総務省統計局における定義
  • 保険会社における定義

それぞれの定義を解説するので、基礎知識として学んでみてください。

国土交通省における定義

国土交通省は「空家等対策の推進に関する特別措置法(以降、空き家法)」の第二条において、空き家を以下のように定義しています。

「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。」

空き家の判断基準(使用されていない常態)は、主に以下のとおりです。

  • 1年以上誰も住んでいない
  • なんらかの使用実績がない
  • 普段から人の出入りがない
  • 電気・ガス・水道が使用されていない
  • 管理が行われていない など

なお、マンションやアパートなどの共同住宅においては、すべての住戸が空室であれば空き家とみなされます。

参考元:国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法
愛知県|参考6 空家等対策Q&A

総務省統計局における定義

総務省統計局『平成30年住宅・土地統計調査の「空き家」の捉え方』における空き家の定義は、以下のとおりです。

「住宅において、調査時点で人が住んでいない、 3か月にわたって住む予定の人もいない住宅」

また、「空き家対策に関する実態調査結果報告書」のコラムにおいては、以下の項目が空き家として定義されています。

  • 別荘や賃貸用・売却用の家屋、部屋
  • 全ての住戸が使用されていないマンションや長屋などの共同住宅
  • 一室以上が使用されているマンションや長屋などの共同住宅の空き室部分
  • 住むことが可能で、景観を著しく損なっている家屋

総務省統計局の空き家における定義の特徴としては、空き家に該当する期間が3か月と空き家法の1年よりも短いことが挙げられるでしょう。

参考元:総務省統計局|平成30年住宅・土地統計調査の「空き家」の捉え方
総務省|空き家対策に関する実態調査結果報告書

保険会社における定義

損保ジャパンでは「企業分野火災保険となる空き家の具体例」として、以下のような具体例を挙げています。

  • 今後も居住する予定の全くない建物
  • 以前は住居として使用されており、家財が残っているが、現在は住居として使用されず今後も居住する予定の全くない建物
  • 建売業者が所有している専用住宅として売却する空き家
  • 転勤等の理由で、現在利用されておらず、また今後も住居として利用するか、決まっていない建物

損保ジャパンの場合は、具体的な期間は指定していません。しかし、住宅として長期間の使用がなかったり、今後も利用する予定がなかったりする住宅が空き家に該当するとしています。

参考元:損保ジャパン|個人用火災総合保険『THE すまいの保険』ご契約条件・保険料

空き家の種類

空き家の種類は、主に以下の4つです。

空き家の種類特徴
賃貸用住宅不動産オーナーが収益目的で市場に提供しているものの、入居者が決まっていない住宅例:アパート・マンション・戸建てなど
売却用住宅売却を目的として市場に出されているものの、購入者が見つかっていない住宅例:アパート・マンション・戸建てなど
二次的住宅日常的には使用されていないものの、特定の時期や目的に使用される住宅例:別荘・別宅など
その他の住宅賃貸用住宅や売却用住宅、二次的住宅にも該当しない住宅例:長期間放置・所有者不明など

このように空き家は、利用目的や状況に応じて分類されています。とくに「その他の住宅」は「特定空き家(詳細は後述)」に指定される可能性が高いため、注意が必要です。

空き家数の推移と増加理由

空き家数は年々、増加傾向にあります。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」における空き家数と空き家率の推移は、以下のとおりです。

時期空き家数空き家率
1978年約268万戸7.6%
1988年約394万戸9.4%
1998年約576万戸11.5%
2008年約757万戸13.1%
2018年約846万戸13.6%
2023年約900万戸13.8%

参考元:総務省|令和5年住宅・土地統計調査

次は、空き家が増加している主な要因を見てみましょう。

  • 少子高齢化と人口減少
  • 新築志向の根強さ
  • 地域間の人口格差
  • 複雑な相続問題
  • 法制度や税制の影響
  • 管理の困難さ

このように空き家が増加する背景には、日本の社会問題から各家庭の複雑な相続問題といった、社会的・経済的・地域的な要因が複雑に絡み合っています

空き家を放置するリスク

空き家を放置するとリスクが発生します。具体的なリスクは、以下のとおりです。

  • 経済的負担が大きくなる
  • 景観や治安の悪化につながる
  • 倒壊や人的被害の危険性が上がる
  • 地域活性化の妨げになる

それぞれ見ていきましょう。

経済的負担が大きくなる

空き家を所有し続けることで、経済的負担が大きくなります。空き家の維持管理に必要な費用は、主に以下のとおりです。

費用詳細
固定資産税&都市計画税住宅を所有しているだけで発生する費用
管理費空き家を維持・管理するための費用例:清掃費・害虫駆除費・管理委託料など
修繕費屋根や外壁、内装など老朽化した部分の修繕に必要な費用
水道光熱費水道や電気を契約している場合の費用
火災・地震保険火災や地震などによる損害に対する費用

空き家の状態や所有者の状況によるものの、一般的には年間で数十万円ほどの経済的負担が発生するでしょう。とくに「特定空き家」に指定された場合は、さらに経済的負担が大きくなります

特定空き家とは?

「特定空き家」とは、自治体が指定するリスクの高い空き家のことです。空き家法による特定空き家の基準は、以下のとおりです。

  • そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる状態

特定空き家に指定されると、所有者に対して自治体からの助言・指導が行われるほか、最終的には行政代執行(空き家の解体等)が行われる可能性もあります。

特定空き家に指定されるデメリット

特定空き家に指定され、助言・指導後も放置するデメリットは、以下のとおりです。

  • 勧告:住宅用地の特例における固定資産税の優遇措置から除外される(最大6倍)
  • 命令:従わない場合は50万円以下の過料に処される可能性あり
  • 最終段階:行政代執行が行われ、すべての費用が所有者負担になる

たとえば、解体の行政代執行が行われれば、数百万円の費用が発生するでしょう。空き家の所有者にとって大きな経済的負担が大きくなります

参考元:国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法

景観や治安の悪化につながる

放置された空き家は、地域の景観や治安に深刻な影響を与えます。外壁の劣化や草木の繁茂が進むと地域の景観が損なわれ、近隣住民や観光客などに悪影響を及ぼすでしょう。また、空き家は不審者やホームレスの溜まり場となりやすく、防犯上のリスクも高まります。このような状況は地域全体の価値を下げる原因となり、所有者や近隣住民にとって不安の種になるでしょう。

倒壊や人的被害の危険性が上がる

老朽化した空き家は、地震や台風などの自然災害時に倒壊の危険性が高まります。また、瓦や壁材が崩れ落ちることで、通行人や近隣住民に怪我をさせるリスクも。事故が発生した場合、所有者は損害賠償責任を問われる可能性があるでしょう。とくに空き家の管理が不十分な場合は過失が認められるため、注意が必要です。

地域活性化の妨げになる

空き家の放置は、地域の活性化を妨げる大きな要因です。空き家を積極的に利活用しなければ、商業施設や公共サービスの縮小が進む負のスパイラルに陥ることがあります。結果的に、人口減少が加速する可能性もあるでしょう。また、観光地や商業地では、放置された空き家が訪問者に悪い印象を与え、地域経済への影響が大きくなる場合も考えられます。

不要な空き家の処分方法

不要になった空き家の処分方法は、以下のとおりです。

  • 売却する
  • 譲渡する
  • 解体する

それぞれの処分方法を解説します。

売却する

空き家の売却は、最も一般的な処分方法です。不動産会社や専門の査定サービスを利用して、空き家の現在の市場価値を確認しましょう。築年数や立地条件、建物の状態によって価格が大きく変わるため、複数社に依頼して比較することがポイントです。

空き家が老朽化している場合は、リフォームしてから売却することで価格が上がることもあります。ただし、売却時には仲介手数料や登記費用が発生したり、売却益が出た場合は譲渡所得税が課税されたりするため、事前に不動産会社や税理士などの専門家に相談しましょう

譲渡する

空き家を無償または低額で譲渡することも、有効な処分方法です。譲渡対象には親族や知人、自治体、NPO団体などが挙げられるでしょう。所有者にとって利用価値がない空き家であっても、第三者であれば利用価値を見出してくれることがあります。

所有者の負担を減らしてくれるだけではなく、有効な利活用により地域活性につながるでしょう。空き家の譲渡をスムーズに進めるには、建物や土地の状態を明確にしたうえで、専門家のサポートを受けることが重要です。

解体する

空き家を活用する予定がない場合、解体して更地にする選択肢もあります。以下の点を考慮して進めることが重要です。

  • 解体費用の見積もりを依頼する
  • 解体に活用できる補助金を利用する
  • 解体後の固定資産税の増加を見込む
  • 解体後の利活用方法

空き家を解体することで住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍に増える可能性があることを覚えておきましょう。解体の目的を明確にし、最適な利活用(売却・貸地など)を検討することが大切です。

空き家の適切な管理方法

空き家の適切な管理方法は、以下の3つです。

  • 定期的な点検や修繕を行う
  • 定期的な換気や清掃をする
  • 管理会社に依頼する

それぞれの管理方法を解説します。

定期的な点検や修繕を行う

定期的に建物の状態を点検することで、雨漏りやシロアリ被害などの問題を早期に発見し、修繕費用を抑えることができます。また、小さな問題でも放置すると大きな損傷につながるため、早めの修繕を行いましょう。

たとえば、屋根の破損や雨漏りは放置すると構造全体の劣化を招く恐れがあります。損傷箇所を放置することで、修繕費用が増加する可能性もあるでしょう。とくに老朽化が進んでいる空き家の点検や修繕は、専門業者に依頼することで安全に行えます。

定期的な換気や清掃をする

定期的な換気や清掃は、以下のように空き家の状態悪化を防止する役割があります。

内容効果
換気による空気の入れ替え月に1~2回の換気により、湿気によるカビやシロアリなどの被害を抑え、建材の劣化を防げる
床や壁の清掃や草木の除去など定期的に清掃を行うことで、害虫や害獣が寄り付きにくくなり、ある程度の衛生状態を保てる
家具や設備の手入れ家具や設備(エアコンや給湯器など)を定期的にチェックすることで、劣化を防ぐことができる

自分でできない場所の清掃や専門知識が必要なメンテナンスなどは、専門業者に依頼しましょう。

管理会社に依頼する

遠方の空き家で移動が大変だったり、管理の時間が取れなかったりする場合は、管理会社に依頼してみましょう。管理会社は、点検や清掃、修繕の手配などを代行してくれるため、手間を大幅に削減できます。

管理会社の費用相場は、月額数千〜数万円ほどです。複数の会社を比較し、信頼性やサービス内容を確認したうえで契約を行いましょう

空き家の利活用方法

空き家の利活用方法として、今回は以下の3つを解説します。

  • 自宅やセカンドハウスとして利用する
  • 事業用として活用する
  • 賃貸として貸し出す

ぜひ参考にしてみてください。

自宅やセカンドハウスとして利用する

長期間放置されていた空き家でも、リフォームやリノベーションを行えば自宅として住むことができます。老朽化した部分の修繕や設備の更新を行うことで、快適な住環境を整えられるでしょう。

また、自分で住む場合は固定資産税の優遇が受けられる場合があるため、放置するよりも経済的なメリットもあります。都会から離れている空き家に関しては、セカンドハウスとして利用するのがおすすめです。都会の喧騒から離れたい人には最適といえるでしょう。

事業用として活用する

空き家を事業用として活用することで、収益を得られるようになるでしょう。事業として空き家を利活用する例としては、カフェや民泊、シェアハウス、レンタルオフィスなどが挙げられます。

事業を始めようとすれば、高額な初期費用がかかりがちです。しかし、空き家を利活用することで、初期費用を抑えながら事業を始められる可能性があります。事業を始めるエリアの特徴や地域住民の需要などを考慮し、最適な事業を選択しましょう。

賃貸として貸し出す

空き家を賃貸住宅として提供することで、安定した収益を得ることが可能です。空き家の状況に応じてリフォームやリノベーションを行えば、借主を見つけやすくなります。また、空き家自体の価値が上がる可能性があるでしょう。

賃貸として貸し出す際は、エリアの特徴を見極めることが大切です。学生や単身者が多いエリアでは小規模な賃貸住宅が好まれます。一方でファミリー層が多いエリアでは、広めの賃貸住宅が好まれる傾向にあるでしょう。

空き家利活用時のポイント

空き家活用時のポイントは、以下のとおりです。

空き家バンクに登録空き家バンクは、自治体や関連団体が運営するマッチングサービスで、空き家の所有者と利用希望者を結びつけるサービス。登録すると、購入希望者や借り手へ空き家をアピールできる。
空き家関連の補助金を活用空き家のリフォームやリノベーションなどに必要な費用の一部を、国や自治体が補助してくれる。所有者の経済的負担の軽減に役立つ。
空き家の専門家に相談空き家の利活用や手続きについて、不動産会社や各士業、空き家バンクなどの専門家に相談する。空き家の最適な利活用アイデアを提案してくれたり、手続きがスムーズに行えたりする。

リスクを抑えながら空き家の有効活用をしよう!

空き家の一般的な定義は、「1年以上(統計局は3か月以上)使用されていない建物」を指します。また、今後も使用予定がない住宅も空き家です。空き家は賃貸用、売却用、二次的住宅、その他の4種類に分類され、特定空き家として指定されると税負担や罰則が生じます。空き家の放置は経済的負担や地域活性化の妨げにつながるため、適切な管理や利活用が重要です。