天国から見守る看板猫サヴォンへの想いを乗せて。保護猫たちのご縁をつなぐカフェ「たまゆらん」の復活へ ― たまゆらんオーナー・大村さんインタビュー

 

一匹の保護猫が難病FIPを発症。子猫の命を救うため、移転資金を注ぎ込み治療に踏み切る

大村さんが保護していた子猫・護くん

大村さんが保護していた子猫・護くん

2020年8月、大村さんが保護していた子猫の一匹・護くんが、命に関わる難病「猫伝染性腹膜炎(FIP)」を発症した。FIPとは、まだ効果的な治療法が確立されていない猫の難病のひとつ。何もしなければ致死率はほぼ100%。1ヶ月ほどで亡くなることも少なくないという。そして、数少ない有効とされる新薬はまだ非認可であるため、治療には100万円以上の費用を要する

 

▲ たまゆらん公式Twitter、2020年8月21日の投稿。体調を崩して検査した護くんに、FIPの診断がくだった。一度は「何もしてあげられない」と絶望する大村さん。

 

護くんは、たまゆらんスタッフの一名、しほさんの近所で保護された子猫の一匹だ。保護までには、しほさんが何年もかけて根気よく地域住民と話し合い、ようやく保護活動への理解を得て実現できた経緯がある。保護された護くんには、すでに里親に名乗り出てくれている人もいた。

治療には、資金をはじめたくさんの問題がある。しかしFIPが発症してしまった以上、一刻の猶予も許されない。大村さんは、移転に備えていた資金を使って、護くんの治療を優先すると決断した

 

▲ たまゆらん公式Twitter、2020年8月21日の投稿。護くんの命を救うため、FIP新薬の投与を決意。

 

「移転費用は、また頑張って貯めればいい」― そんな大村さんの想いが実を結び、護くんはFIPを乗り越え、元気を取り戻す。難病を乗り越えて甘えん坊ぶりを発揮する護くんの様子は、Twitterやインスタグラムを通じて多くの人たちに癒しと勇気を与えた。

▲ たまゆらん公式Twitter、2020年12月7日の投稿。新薬の長い投与期間が終わり、元気な様子を見せる護くん。一度は決まっていたが白紙に戻ってしまった里親探しも再開することができた。

たくさんの方々に応援されて、FIPを乗り越えた護くんと大村さん。しかし、コロナ禍で思うように移転費用を用意し直せない中、さらなる悲劇が大村さんを襲った。

最愛の看板猫・サヴォンの旅立ち。悲しみにくれる中、テナント立ち退きも決まり……

「おうちごはんcafe たまゆらん」のオーナー猫・SAVON(サヴォン)くん

「おうちごはんcafe たまゆらん」のオーナー猫・SAVON(サヴォン)くん

たまゆらんの「オーナー猫」として、多くのお客さまにも親しまれてきた大村さんの愛猫・サヴォン。高齢で腎臓も弱っていたサヴォンは、2020年11月28日、永い眠りについた。

 

▲ たまゆらん公式Twitter、2020年11月28日の投稿。コメント欄には大勢の暖かな声が寄せられた。

悲しみにくれ、「喪失感でしばらく何も手が付かなかった」と話す大村さん。そんな大村さんとサヴォンに、SNSでは日本中からたくさんの暖かい言葉が贈られた。

 

▲ たまゆらん公式Twitter、2020年11月29日の投稿。看板猫サヴォンくんの訃報を聞き、暖かいコメントとともにお客さまが撮影していたさまざまなサヴォンくんの写真が大村さんの元へと寄せられた。

しかし現実は非情にも、大村さんとたまゆらんにさらなる追い討ちをかける。以前から挙がっていたテナント移転の話が、いよいよ現実のものになったのだ

愛猫・サヴォンが旅立って間もない2021年12月、大家さんから「テナントの売買の話があって、この機会に売ろうと思う。申し訳ないけど、来年3月末でお店を立ち退いてほしい……」と話があった。

移転先を探し始めるも、物件探しは予想以上に困難を極める。「動物可・飲食可」の条件で探さなければならない上、大村さんが探していた10〜15坪ほどの飲食店は「給付金バブル」の恩恵を最も受けており、そもそも空き店舗がまったく出てこない状況だったのだ。

「3月末までに出なあかんけど、うちの場合店舗の2階が住居になっているんで、とにかく住む家だけでも決めないと、という感じでした。」