天国から見守る看板猫サヴォンへの想いを乗せて。保護猫たちのご縁をつなぐカフェ「たまゆらん」の復活へ ― たまゆらんオーナー・大村さんインタビュー

京都は東山。銀閣寺や京都大学から徒歩圏内の浄土寺西田町にお店を構える「おうちごはんcafe たまゆらん」。2012年の7月にオープンして以来、学生や猫好きの方をはじめ、多くの人たちに愛され続けてきた。

大村 明江(おおむら あきえ)さんが切り盛りするこのカフェ「たまゆらん」。おいしくてボリュームたっぷり、それなのにリーズナブルなご飯メニューと売り切れ必至の手作りスイーツ、そして店内で気ままに過ごす看板猫たちで多くのファンに支えられてきた。

(上)「おうちごはんcafe たまゆらん」の外装と看板猫サヴォン(下)人気のパフェとカレープレート

また、大村さんとたまゆらんは猫の保護活動でもよく知られている。

「たまゆらんは猫カフェじゃないですし、“保護猫の受け入れ活動をしているお店”として経営しているわけじゃないんですよ」

大村さん自身はそう語っているが、実際のところは、里親が決まるまでの保護猫たちが何十、何百もたまゆらんのお店を仮のおうちとして過ごし、大村さんやお客さまたちに可愛がられてきた。また、たまゆらん主催で保護猫の譲渡会を開催することも多い。そんな様子から、自然と「たまゆらん保猫園」と呼ばれるようになったほどだ。

大村さんと、保護していた子猫たち

インタビュー時、大村さんが自宅で保護していた子猫たちと大村さん

しかし、そんな「おうちごはんcafe たまゆらん」にいま、実店舗はない。コロナ禍による売り上げ激減により、無期限の休業状態に追い込まれた。さらには土地開発の話が持ち上がり、テナント立ち退きを余儀なくされてしまったのだ。現在は、急ごしらえで準備したウェブショップにて焼き菓子の販売をするのみとなっている。

大村さんはいま、常連のお客さまたちにとっての憩いの場であり、保護猫たちのご縁を繋ぐ場所にもなっていた「おうちごはんcafe たまゆらん」の店舗を取り戻すため、準備に奔走している。

そんな大村さんに、「おうちごはんcafe たまゆらん」のことや保護猫活動、そしていま準備を進めている新店舗のことなど、たまゆらんと大村さんが歩んできたストーリーを伺った。

大村さん

◎ プロフィール

■ 大村 明江(おおむら あきえ)
京都生まれ大阪育ち。10代のアルバイトからHard Rock Cafeやカプリチョーザ、にんにくやなどで飲食業に従事し、炭火焼肉牛角のエリアを受け持つスーパーバイザーを担当。大阪、静岡、新潟、長野、山梨、広島、岡山、福岡などへの移動を経て京都に戻る。そして2012年7月、『おうちごはんcafe たまゆらん』をオープンした。(→ Twitter / Instagram

取材・文 : 充紀 / 写真 : yukina (※ 一部写真は大村さんによる提供です)

おいしい食事をお腹いっぱい食べられるカフェ「たまゆらん」

「おうちごはんcafe たまゆらん」の外装

「おうちごはんcafe たまゆらん」は名前の通り、おいしく健康的な食事を実家のようにお腹いっぱい食べられるカフェだ。ご飯メニューだけじゃなく、フルーツをたっぷりと使用した贅沢なパフェや、こだわりの焼き菓子をはじめとするデザートメニューも有名だ。

「おうちごはんcafe たまゆらん」人気の食事メニュー

「おうちごはんcafe たまゆらん」人気の食事メニュー

「おうちごはんcafe たまゆらん」人気のスイーツメニュー

「おうちごはんcafe たまゆらん」人気のスイーツメニュー。いちごを丸ごと1パック使用するなど、フルーツたっぷり。

「私としては、お客さんに“お腹いっぱい食べてもらいたい”という想いがあって、このお店をはじめたんです。女の子って、実はけっこう食べる子だって多いじゃないですか。でも、女の子がひとりで入りやすいようなお店はランチでも1,400円、1,500円とかするのに、あんまりボリュームのないお店が当時多かったんですよ。

私自身、お昼時に出かけていて『定食っぽいもの食べたいな』って思ったときに、ひとりで入りたいお店が全然見つからなかったんです。それをきっかけに『だったらお店でもやるかな!』とたまゆらんをオープンしました。」

 
「おうちごはんcafe たまゆらん」人気メニューのひとつ「一枚肉のフライドチキンのごはんプレート」

「おうちごはんcafe たまゆらん」人気メニューのひとつ「一枚肉のフライドチキンのごはんプレート」

猫カフェではなく“看板猫たちに会えるカフェ”

「おうちごはんcafe たまゆらん」の店内で気ままにくつろぐ大村さんの愛猫たち

「おうちごはんcafe たまゆらん」の店内で気ままにくつろぐ大村さんの愛猫たち

そして、たまゆらんを語るには欠かせない要素がもうひとつ。気まぐれにお店に姿をあらわし、お客さまに接客する「店員猫」たちの存在だ。茶トラの大きな看板猫SAVON(サヴォン)くんをはじめ、歴代で11匹もの店員猫たちがお客さまを楽しませてきた。

「おうちごはんcafe たまゆらん」のオーナー猫・SAVON(サヴォン)くん

「おうちごはんcafe たまゆらん」のオーナー猫・SAVON(サヴォン)くん

そんな「猫に会えるお店」として有名なたまゆらんだが、「たまゆらんは猫カフェではない」と大村さんは語る。

「よく『猫カフェなんですか?』って聞かれるんですけど、わたしとしては、猫カフェじゃなくて “猫がいるカフェ” のつもりなんです。

看板犬、看板猫がいるうどん屋さんとか定食屋さんとかってあると思うんですけど、そういうお店はお食事の料金だけで、犬や猫と触れ合うための料金って取ってないじゃないですか。うちも猫たちの料金は取ってないので、それと一緒ですよね。

とはいっても、お客さまがうちを猫カフェだと思って楽しんでくださるのは大歓迎ですけどね(笑)」

 
お客さんの膝の上に自ら飛び乗るサヴォンくん

お客さんの膝の上に自ら飛び乗るサヴォンくん

いまでは「猫のいるカフェ」として有名なたまゆらんだが、大村さんはオープン当初、猫たちをお店に出しておくつもりはなかったという。

「お店の2階が住居になってまして、階段前の扉には鍵をかけてお店とは分けていたんです。でもある日、なぜかお店の真ん中に猫が座ってるんですよ。そのときは『あれ〜おかしいな〜。ぎんちゃんなんでおんの? 鍵かけ忘れちゃったのかな〜?』と思っておうちに戻したんですけど、次の日もまたぎんちゃんがお店にいまして。どうも、鍵をくわえて回す技を覚えてしまったみたいなんですよね(笑)

それで次の日もまた出てきちゃったんですが、そのときにいたお客さまが『猫ちゃんおるんやったら、お店に出しとった方がいいやん!』って言ってくださったので、それをきっかけに “看板猫のいるカフェ” になった感じですね。」

 

▲ たまゆらん公式Twitter、2014年7月10日の投稿。たまゆらんオープン当初から在籍した「店員猫」のぎんちゃん。たまゆらんが “看板猫のいるカフェ” になるきっかけを作ったぎんちゃんは、お店で出会った里親さまに引き取られ、2012年9月末に店員猫を卒業した。